最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品

5/14/2009

大阪での集団即興劇映画、とりあえず撮り始めました

承前。なにしろ脚本なし、フィクションの人物を巨大都市の現実に放り込んだらどうなるか、となるとまずは撮り始めないとはじまらない、というわけで報告遅ればせながら、5月6日と7日に、ものは試しで大阪での集団即興劇映画を撮影開始、とりあえず二日かけていろいろ試してみました。上の写真は全長2.6キロとかで、日本一長いアーケード商店街だという天六をさまよう、数年ぶりに大阪に帰って来た世捨て人役の俳優・谷口勝彦さん。この混雑した商店街を数百メートルにわたって二往復、力技の手持ち移動で腕はクタクタ。でも谷口さんは一往復ですでに自分の役柄の歩き方を創造してしまい、幸先はいいのかな? 

あいにくの雨でしたが、中崎町でまるでアントニオーニか吉田喜重のようなミステリアスなショットを撮ってしまいました(こちらの安川有果さんは本当は自身がインディーズの監督)。

本格的に撮影に入るのは6月に入ってからなので、まだ出演希望者は受付中。今週末は再び大阪で、金曜日にプラネット+1の下の素敵なカフェ太陽ノ塔企画発表と撮影したもののお披露目をやりさらにリクルート、週末は大阪ですでに決まっているキャストと話をつめたり、オーディションの続きをやります。関西方面で興味ある人はぜひ、まずは金曜日に太陽ノ塔にいらっしゃるか、compass_films@mac.comにメールを下さい。

あともちろん、出演という形でなくてもサポート、あるいは出資などをご提案下さる方も…是非…。これがないと完成できるかどうかは、もう僕の体力勝負としか言いようがありません。

地下鉄中崎町駅前で電話でカレシにブチ切れる女子大生を演ずる市田美和さんは、すでに「爆弾娘」とのあだ名を出演の決まったメンバーからちょうだいしてしまいました。元気がよくて頭の回転が早い21歳の提案したストーリーは、コメディ・タッチながらも「満たされているのが不満」というなかなか実存的かつ現代的なテーマ。

大阪でのプロデュースはインディーズ集団・思考ノ喇叭社のメンバーで野心的処女作『罠を跳び越える女』(まあストローブ=ユイレの猿真似と言ってしまえばそれまでですが)を発表している桝井孝則君。ストローブ=ユイレの方法論を本気で日本語で日本でやりながら相当な毒気とユーモアを忍び込ませる自称「ドSの鬼畜」の才能ある若手映画作家ですが、こういうムチャな現場を取り仕切るプロデュース能力も相当なもので感服。なにしろ天六商店街で手持ちを合計で1Km半もやらせたのは、ひたすら桝井君が「もう一回やるでしょ」「だからもう腕の筋肉がパンパンで」「だからもう一回やるでしょ」「だから腕が…」「だからもう一回やるでしょ。ほら腕ならマッサージしてやるから」…ってなわけでもう一回やりました。確かにやってよかった…。だから桝井君が正しいのだが、しかしオレの腕はどうなる?

以上は二日目の街頭撮影テスト、文字通りの行き当たりばったり撮影ぶん。

撮影一週間前くらいから滞在して桝井君と一緒にキャスティングをして、初日には即興とはいえけっこう仕込んでかなり凝った7〜10分(テイクによる)のワンショット/ワンシークエンスの力技、しかも360度パン、しかもヌードありのラブシーン? まあここまで派手に力技をやらないと、「脚本もなし、出演者の半分は素人、しかも基本的に長廻しのワンショット・ワンシークエンスばかり」というムチャな実験が成立することを納得させられませんから、ということで…。

PanasonicのHVX205という新しいHDキャメラで24コマ撮影(キャメラは京都ディーユーの提供。Thanks)。この光のデリケートさや肌の質感は、デジタル撮影とは思えないニュアンスだと素直に感動…。

フォーカスを浅くした際のボケ具合も絶妙です。しかしどういうラブシーンなんだか…。出演は大阪大学でランドスケープデザインなどの講師をしているアーチストの花村周寛さんと、プラネット+1で映写スタッフをしながら映画作家を目指す田中健太郎君。どちらも俳優としては素人なのはまだ分かるとして、しかもゲイでもないそうです。なのにここまで演じきれるか? まさに体当たり。

この煙とか湯気もなんとも…。ただし生データで1分あたり1GBくらいあるというとんでもないデータ量の多さと、どうにもそろそろ5年になる我がPowerMac G5 dual 2.5GHzとの相性の悪さがネックで、なかなか正常に再生できない…。

この初日撮影分(いちばんいいテイクは約9分の長廻しワンテイクのワンシーン)は、近々短編として完成させてウェブ上でアップします。なにしろまったく資金なしで始めているので、これぐらいいろんな意味で派手かつ過激(?)な見せ金(?)を発表すれば、信用してお金を出してくれる人もいるのではないかと…。イヤ本当に、往復の交通費だけでも大変なことになり、なかなか他の仕事をやってる余裕もなくなりそうで、Macも買い替えねばならないかもしれず…ご支援のほどぜひ…。未だかつてない日本映画になることは保証します。

舞台が変わり、土地が変わって参加する人がちがうと、同じ方法論を使った『ぼくらはもう帰れない』とは主題的にはまったく異なり、社会のなかのバラバラの個人がすれ違い続けるのが主体の社会劇的なコメディだった東京版とはうって変わって、家族や愛、恋愛といったよりパーソナルな、人と人とのつながりをめぐる物語が大阪中を右往左往しつつ並行して展開するような映画になりそうな気配。持ち込まれたストーリーの多くが、一見平凡な生活の風景のようでいて驚くほどディープでもあるので、どう展開するのかが楽しみ。

今からでも参加したい方、興味のある方はこちらのエントリーをご覧下さい。連絡先なども書いてありますので。
http://toshifujiwara.blogspot.com/2009/04/osaka4.html

映画全体の題名はいまのところ『ほんまかいな? Is It All True?』。初日撮影分だけで作る短編(ワンカットのみの9分間)は『ほんの少しだけでも愛を For a Little Bit of Love, even for Just This Little Instance』(露骨にさるドイツ人映画作家へのオマージュです、はい)。

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