最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品
DVD 2月20日より発売!amazon.co.jp 配信はこちら

8/09/2013

麻生サンがまたやってしまいました


4年前に総理大臣だった時の吉田茂の出来の悪い孫も大変だったが、それ以上に大変な失言をやらかしてしまった。なにしろ歴史の基本的な知識についても、立憲民主主義の基礎についても、何重にも誤っているのだからどうしようもない。

ナチスが合法的な選挙で政権をとっているのは確かだが、そこから先の麻生理論と来たら、まずヴァイマール憲法が気がついたらナチス憲法になっていたもなにも、ナチス憲法なんて存在したことがない。ヒトラーは憲法を執行停止にしただけだ。その移行も「静かに」には行われていない。むしろ大衆の恐怖心を煽ることと弾圧の「大騒ぎ」の末だ。

なによりも、憲法を変えることが「静かに」「気がついたら変わっていた」なんて、民主国家では決してあってはならないことだ。

それでも麻生サンを擁護したい人たちは「マスコミの偏向」「メディアスクラムだ」って…「ナチスはうまくやった。あの手口に学んでも」とか言ってしまえば誰もが批判せざるを得ない(実はナチスが好きな人でさえ)のだが、どこまで世の中が分かってないのか、という…

「麻生さんは曲解されたんだ」と言い張ったところで、文字通りの発言の通りでまったく曲解もなにもされていない(曲解しようがない)。無理矢理に麻生さん贔屓に徹して、ただの間違いであることを「言い間違えただけだ」と斟酌してあげると、今度は何が言いたいのかさっぱり分からない支離滅裂になってしまう。

とはいえ、「麻生さんの真意」がまったく無視されているのは、確かにその通りである。

麻生さんは「憲法改正は静かにやった方がいい」と言いたかったわけでもないし、「ナチスの手口を学んでもいい」は単にその場で話している人たちに通用し易いレトリック(ナチスが好きな極右の皆さんだから)として言っただけだ。

麻生さんの真意は、極右改憲派の、頭に血の昇った危険な連中の会合に、それでも彼らが安倍晋三首相の有力支持者だから無視するわけにもいかず、なだめるためにその場に行って、「あなた達、少し静かにしてくれませんか」と言いたかった、ただそれだけである。

安倍サンにとってはオトモダチであり、有力支持者でも、彼らの存在自体は邪魔、こと今の日本の外交と国益にとっては害悪でしかない。それが大声で政権の有力支持者ヅラして「改憲だ!」「軍備増強!」とか叫び続けられては、麻生さんも困ってしまっているのである。

そんな彼らに黙ってもらうご機嫌とりだから、相手に合せて、彼らがいちばん納得し易いであろう「ほらナチスだってこうやったんだし(あなた達ナチス好きでしょ、尊敬してるでしょ)、だから見習いなさい」というレトリックを、つい調子にのってやってしまった。

とはいえ麻生さんもメディアに流れるのが最初から分かっているおおやけの場なら、もっと慎重なはずだ。

馬鹿のひとつ覚えで「メディア・スクラムだ」とか叫ぶ人にひとつだけ、もう少し大人にふさわしい話のヒントを与えてあげるなら、なぜこの内輪の講演会での発言がメディアに流れたのか、を考えて見て欲しい。

テレビカメラも入っておらず、誰が録音したのか、プロとは思えない音声しかない。橋下大阪市長がぶらさがり会見で、TVカメラの前でやってしまった失言とは、事情がまるで違う(あれは撮られてしまったらアウトなことを、撮られている場所でやってしまったのだ)。

麻生さんの場合は、本来ならまともなメディアが誰も相手にしない、取材にも入らない極右の会合である。しかもこのテの危険過ぎる頭に血が昇った右派が安倍政権の重要支持者であること自体、これまでメディアはほとんど報じていない。むしろ意図的に隠蔽して来た。

「メディアの陰謀だ!」と叫ぶのなら、ある情報が流れたのは、誰がメディアに対して権限や権力を持っていて、どういう意向だったのかを、きちんと現実的に分析・推測しなければ意味がない。中韓の反日勢力が麻生さんを潰そうとしているなんてマンガチックな陰謀論ファンタジーでは、馬鹿馬鹿し過ぎて大人の世界では相手にされませんよ。

そもそも麻生さんはなんであんな危険な極右の、付き合いがあること自体バレたら国際問題になりかねない集会に「なだめ役」で行って「あなた達ちょっと静かにした方が」と言ったのか(繰り返すが、麻生さんの意図は、櫻井よしこ氏らに「あなたたちお願いだから静かにして」だけだろう)、それは誰の意向を反映してなのか?

そしてなぜその情報が、誰かの意向で、マスコミに流され、これまで現政権の危険な極右人脈について口を閉ざしていた大手メディアが、今回はそろってこの話を記事にしたのか。

残念ながらその真相は、「麻生さんをメディアの陰謀から守れ」と叫ぶ人たちの期待とは、あらゆる点で真逆であると同時に、だからこそ今の日本のメディアが決して報道できない話でもある。

よく見てご覧なさい。麻生さんの「ナチスの手口に学べ」発言が、櫻井よしこらの危険な極右集団の会合で言われたものであることすら、メディアはろくに言及していない。その意味では「偏向はある」のだ。

…といって、これもマスコミがちゃんと報じてないから困ってしまうものの、ベタ記事レベルでは出ている情報をや海外報道を冷静客観に点と点を線で結べば、答えは簡単に出て来る。

シンガポールで安倍首相はバイデン米副大統領に会っている。

この会談内容が日本のメディアでほとんど報じられないのも当然で、要は安倍晋三はバイデンにこっぴどく叱られた、これ以上極右歴史修正主義発言を続け、改憲を叫び、中国や韓国との対立を激化させ、まして終戦記念日に靖国神社に公式参拝なんてやったら、オバマ政権は安倍を絶対に許さない、とほとんど恫喝に近い言い方をされたのだ。

すでにオバマ政権は何度もこのシグナルを出している。安倍新政権発足ですぐに日米首脳会談を申し込んでも先延ばしにされ、ルース駐日大使はNHKの9時のニュースを呼びつけて、日本が日中関係をこれ以上悪化させることがあってはならない、と警告を発した。

会談がやっと実現してもオバマは露骨な不快感を示し、受け入れの形式も日本の新首相のホワイトハウス訪問ではあり得ないような、低レベルのものだった。

今の尖閣諸島問題や竹島、慰安婦問題をめぐる日中・日韓の対立が、客観的には日本が一方的に挑発したものでしかなく、米国が不快感を露骨に示していることも、飯島補佐官を極秘訪朝させたはずが金正恩政権にまんまと利用されて安倍政権が一層の不信感を買ったことも、日本のメディアは遠慮して報じていない。

参院選を受けたこのブログでは、「これでは誰も、勝ち誇っておごる安倍とそのオトモダチたちの首に鈴をつけられないかも知れない」と書いたが、それでも鈴をつけなければ、日本がどうしようもない立場に追いつめられる。

安倍さんのオトモダチ内閣ではまだ話が判っている部類であり、安倍さんに、やんわりと、傷つけないように、うまくもの申せるのは、麻生さんだけだ。

そして麻生さんは安倍さんほど頭が悪いわけではなく、むしろ空気を読んで周囲に合せるのには敏感な人だ(だから麻生さんの周囲に、麻生さんをけなす人はほとんどいない、その意味では明るく、底抜けに「いい人」である)。

ただ麻生さんが惜しいのは、「空気を読んで周囲に合せるのに敏感」過ぎるお調子者なことである。だから危険な極右の集団にはいちばん伝わり易い話(「ナチスに学んで静かにやりましょうよ」)を、場の空気に合わせ過ぎてやってしまったのだ。

まともな政治的分析力があれば誰でも気づくだろうが、麻生発言には靖国神社も「静かにお参りすれば」が含まれている。8月15日に安倍が絶対に靖国に行けないのが分かっているから、この極右集団が掌を返したようにその安倍さんを攻撃することがないように、やんわりと布石を打っているのである。

で、なんで麻生さんのその極右の集会での発言がおおっぴらに流れたのか?

メディアにはなぜこの時ばかりはブレーキがかからなかったのか?メディアに対して最大の権限・権力を持っている側が意図したことだから、に決まっているだろう。

まったく、少しは現実の社会というものを考えて欲しい。 
日本のメディアに最も影響力を持ち得る相手は誰か?政治報道の最重要の情報源であり、テレビにとっては許認可権も握り、スポンサーとの利害もしばしば一致する、官僚機構に決まっているじゃないか。 
それでなくても日本人は、公権力の権威には弱い国民性がある。研究者が出すデータよりも、官公庁が出すデータの方が信頼されてしまう国だ。新聞記者だってそこは同じ…というより自身も官僚と同様に高学歴の大手の記者たちこそ、そういう権威主義の最たるものである。 
こと昨今は記者の従順なサラリーマン化が進んでいる。官僚に「あなたにだけは教えてあげるが」と言われたら飛びつくのが記者の習性だ。利害関係べったりに決まってるじゃん。 
事件報道だって警察からの情報ベッタリでしょ?なんだよ、その「反日勢力が」っていうあり得ない陰謀論は。 
まだ北京支局を潰すぞ、と脅しをかけられた文革の時代ならともかく(それ何十年前の話だ?)、今の北京政府がどうやったら日本のメディアに影響力を持ち得るんだよ?

つまり麻生さんは官邸の官僚に、シンガポールでの安倍バイデン会談の真相を聞かされ、なだめ役を頼まれた。

その頼んだ官邸官僚は実は麻生さんをハメることも最初から計算に入れていたのか、とんでもない失言を麻生さんがつい言ってしまったから即座に利用することを決めたのか、どちらなのかまでは分からないが(ただし麻生さん自身の知識のいい加減さからすれば、ナチス云々自体が誰かの入れ知恵であることは否定出来ない)、結果として官邸の官僚は麻生さんにこっそり宥めさせるよりももっと強力なカードを手に入れ、躊躇なく利用したのだ。

それも単に安倍政権を支持する極右な連中を黙らせるだけでなく、政権そのものに強烈にクギを刺せるカードだ。

つまり、政権の重要閣僚が改憲に関して「ナチスの手口を学んでもいい」と言ってしまえば、その上「気がついたら憲法が変わっていた、というのがいい」とまで口走ってしまい、それが公になってしまえば、批判の嵐になるのは当然である。よほどの馬鹿以外は誰も弁護出来ない。

これではいくら空気が読めず頭が悪く、自分の置かれた状況が分かっていない安倍さんだって、改憲なんて当分は持ち出せなくなる。

霞ヶ関にしてみれば、自民党の改憲草案なんて出されるだけ迷惑な内容であることは(単純に、憲法になっていない恥ずかし過ぎる内容である)既にこのブログで述べた通りだ。だから絶対に持ち出させたくないし、メディアにも報道させていない。

対米関係も対中関係も韓国との関係も、これ以上は悪化させられない。かといってそんな対立を煽る幼稚なナショナリズム報道を菅内閣の頃からさんざん大手メディアにやらせて来てしまって、それが今やメディア自体の自動機械的な暴走状態になってしまっていれば、「止めろ」と言うだけで止められるものでもない。なにしろメディア自身が確信犯的な誤報を繰り返して来たのだ。「すみません、今まで嘘言ってました」と認めるわけにもいくまい。

微妙に論調を変える準備は新聞ならベタ記事で、テレビならNHKのお昼のニュースくらいではやってはいるものの、さて困った、というところへ、「ナチスに学べ」くらいの爆弾が放り込まれれば、これは過去をウヤムヤにする上でかなり有効な冷や水にはなる。

その意味では、麻生さんはまことに誰にとってもありがたい状況で失言をやらかしてくれたことになる。

これでめでたくヤバ過ぎる改憲話は潰れ、幼稚過ぎる極右勘違い首相も大人しくなり、霞ヶ関はいくらでも言いなりに出来る、これから三年は選挙がない安定政権を、確保できたわけだ。

霞ヶ関では今ごろ、「バカとハサミは使いようだな」と言い合っているのかも知れない。史上空前の頭が悪く政策が分からず空気も読めない勘違い首相の安倍晋三でも、だからこそうまく操縦すれば最高の操り人形になる。

(しかし安倍晋三さん、自らの持っていた「史上最低の無能総理」の記録を、二度目の政権であっけなく更新するんだから、ある意味凄いよね)

これで消費増税路線は安泰だし、懸案だった福一事故収束への国費投入も、この「ナチス」騒ぎに焦った安倍さんをうまく口説き落として了承させた。

しかし安倍さんの言い草とは異なり、「国民世論の関心も高く」なんてぜんぜんなかった、ほとんど報道もされていなかった話だが、安倍さんは官僚に「世論も関心を持ってるし、人気でますよ」とでも吹き込まれたんでしょ。分かり易い人だ。

麻生さんにはちょっとかわいそうですが、まあ自業自得ですから…。

1 件のコメント:

  1. 匿名8/10/2013

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