最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品
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11/11/2008

英国・Sheffield Doc/Festに行って来ました


『フェンス』のワールド・プレミア上映で英国・北イングランドのかつての鉄鋼都市シェフィールドで開催されたドキュメンタリー映画祭に行って来ました。やっと完成・上映の機会が出来たというか、むしろここが決まっていたのでそれに合わせてやっと完成させたというのが真相のような気もしますが。

この映画祭には昨年も行っているので、シェフィールドの街の印象その他について詳しくはこちらの昨年の記事をどうぞ。鉄鋼産業がなくなってしまって20年くらい、英国の産業空洞化の典型みたいな雰囲気を昨年は感じていたので(ちなみにタイトル写真はなぜか建築途中のまま 2〜30年放置されているル・コルビジェっぽい集合住宅の残骸)、現在英国は世界金融危機のダメージを受けているはずだしさぞ不景気なのだろうと覚悟していたわりには、むしろ昨年よりも穏やかな感じだったのは、気のせいだろうか? 金融危機の前から主幹産業がなくなってる街だけに、いまさらどーってことないからなのかも知れないし、あるいはアメリカ大統領選挙の結果にイギリス人がアメリカ人以上に喜んでるからかも知れないが。






今年は小川紳介監督と小川プロの小特集があったので、元小川の助監督・飯塚俊男さんも一緒の旅で、わりと久々に小川紳介の最高傑作『三里塚・辺田部落』も再見。映画祭側から小川プロ特集で呼ぶゲストは誰がいいかと訊ねられたので飯塚さんを推薦し、飯塚さんの『映画の都・ふたたび』も見てもらったところこれも上映したいということになり、故・福田克彦さんの『映画作りと村への道』(『辺田部落』のいわばメイキングだが、これ自体がなかなかの傑作)もプログラムに含まれていたりで、小川紳介というひとりの監督ではなく小川プロという集団と、村落共同体に基づいた日本的コミュニティをめぐる組み合わせになっていたのかも知れない。

だとすると『フェンス』もまた表向きは池子米軍基地問題をめぐるドキュメンタリーではあるが、実際には米軍基地そのものよりも、戦前に海軍に接収され、戦後は米軍が居続けたことで失われたふたつの農村(池子村と柏原村)をめぐる記憶と、現在の米軍がいる池子から、日本が戦中戦後を通じて失って来たかつての日本を想起するようなドキュメンタリーなので、小川特集とこれを両方見た人(が大部分だったりもするわけだが)にとっては頭のなかで話がつながるのかも知れない。村落共同体、里山、自然との共生…

もっとも、昨年はここで『映画は生きものの記録である』を上映している上に『フェンス』のメイン・スタッフが撮影監督・大津幸四郎、音響監督・久保田幸雄だったりするせいもあるのだろうが、上映前の紹介で「土本や小川の精神を引き継ぐ」みたいに紹介されたのは、「そりゃまったく違うだろう?」と思わざるを得ないのだが…。

日本のドキュメンタリー史からの影響を云々するのなら、意識していたわけでは必ずしもないものの、一番大きいのは「見えないもの」「すでに失われたもの」「不在」をこそ映画に撮るという共通の興味において、昨年亡くなった佐藤真さん(写真は『Self and Others』)なのだし、第二部のタイトル前に献辞を入れている楊徳昌(エドワード・ヤン)と、あとジョン・フォードの最高傑作『シャイアン』、あるいはアントニオーニの方が、直接的な影響はずっと大きいわけだし。



…あと映画以外では、ターナーとセザンヌと、広重、円山応挙ですかね。極めて日本的な風景と建築についての映画でもあるので、日本美術が参照になってしまうのは自然ではありますか。

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