最新作『無人地帯 No Man's Zone』(2012)
〜福島第一原発事故、失われゆく風景、そこに生きて来た人々〜
第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品
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11/13/2008

権力の意味と責任が分かってない人々


先日書いた通りの諸般の事情で8月からずっと書いていなかったので、本ブログで総理大臣としての吉田茂の出来の悪い孫に言及するのは今回が初めてになる。とはいえここまで出来が悪いとはさすがに想定外の予想外で、「政局よりも政策」「景気回復を最優先」と大見得を切っておきながら、目玉はなんと「定額給付金」? これまでさんざん民主党を「財源論」で批判して来た舌の根も乾かないうちに国債の利子支払いにプールされていた特別会計の準備金を2兆円ばらまくって? 

福田前首相が公明党に呑まされた定額減税なら手続きはそんなに難しくないのが、それじゃ選挙に間に合わないから年度内に現金を、というだけでもむちゃくちゃ。大規模減税は実際には確定申告以降でないとお金がまわらないとはいえ、景気というのは気分の問題でもあるので、減税のアナウンス効果のアドバルーンだけである程度の浮揚効果が実はあったりするのだが、現金を配ったってほとんど経済効果がないのはすでにさんざん指摘されているのに、それでもやるという。それでも「経済の麻生」を自己主張したい首相って…?

どう考えても経済とか景気ということがなにも分かってないこのヒト、定額給付と引き換えに3年後には消費税引き上げって、「お小遣いをあげるから三年以内に使いなさい」って…。景気対策に全力を挙げる人がなんで大幅増税の話をするのだろう? 前代未聞の白痴内閣か、これは?

日本経済の最大の不安要因が年間GDPの1.6倍あるという債務なのに景気対策にもならなければ社会保障政策としては杜撰極まりない「目玉」で税金の無駄遣いって、なにを考えているのだろうかこの首相は。経済のことなんてなにも分かってないどころか、「ホッケの煮付け」に、「未曾有」を「みそゆう」と読んだとか。マンガは難しい漢字にはフリ仮名がついてますからね。それにしても日本政治の常套句である「前例を踏襲」の「踏襲」が読めなかったとか…。いったい何年政治家やっているんだろう。挙げ句の果てに定額給付金の事務的な詳細や所得制限はぜんぶ「市町村で決めて下さい」で、それを「地方分権だからいいじゃないか」って、この無責任発言連発だけで、次回の総選挙での自民党の獲得票数はどれだけ激減するんでしょう。

だいたい人をバカにしてるよね。一人あたり1万2000円お小遣いをあげて、土日に自家用車は高速1000円でどこまで行ってもいいから、家族旅行に行ってお金を使いなさい。そしたら内需拡大で景気浮揚、とでもいいたいのだろうか? さすが渋谷に豪邸住まいのおぼっちゃまの金銭感覚はすごい。

と思っていたらもっとすごい大バカものの登場である。田母神前空幕長。いわゆる修正主義的な右派歴史家の秦郁彦氏からまで「幼稚すぎて不愉快」「徳川埋蔵金伝説並みの妄想史観」とバッサリ酷評される論文で鼻高々なのもご愛嬌だが、そもそも航空自衛隊の最高位にある軍人が、軍人の責任をなにも分かっていないらしい。

…と呆れていたらマスコミのコメンテーターも政治的になにが問題なのかよく分かってないコメントが相次ぐので困ってしまう上に、本人は「言論弾圧だ」と言いたい風情で、ネット上ではそれを支持する意見までちらほら…。あのぉ…単純にテクニカルな法的手続きの問題として、政府見解や防衛大臣の表明した意思、最高指揮官であるところの内閣総理大臣が公的に踏襲(「ふしゅう」でなく「とうしゅう」ですよ麻生さん)している見解に背くことを公に表明するのは、幕僚という指揮官の立場にある軍人として自動的にNG、事実上の命令違反にあたり、まともな軍隊なら即刻更迭ものの軍紀違反なんですが…。右派気取りが軍人の基本的ルールも分かってないっていったい…。

もっとも田母神前空幕長は防衛省の事情聴取に、元首相の名前を二人挙げて自分の正しさを主張したそうな。その一人は当然、「神の国」発言の森喜朗。もう一人ってのは田母神氏が空自のトップに就任したときの総理だった「美しい国」のおぼっちゃまか、横須賀が地元だというのに米軍大好きの小泉のことかも知れないが、ほどほどに汚職に染まって灰色だったが戦争嫌いで現実主義の穏健派でもあった田中派系の勢力が落ちると、岸伸介や福田赳夫系の流れ(なぜか息子の康夫氏は除く)って、かなり非現実的に国家主義的で、ファナテイックに危険でもあるんですよね。森元総理となると、今回の騒動の発端になった懸賞論文を公募したアパグループと森のあいだの黒い噂は有名だったり、立派に灰色な噂まで多いし。

ちなみに新聞各紙の社説などは、さすがに文民統制の上で問題(つまり田母神氏個人がなにを考えようが自由だが、そのような国家政府の公式見解に反する思想を公に出す時点で高位の自衛官の資格がない)との指摘でこの愚行をバッサリ批判しているものの、参詣新聞だけは例外。ただ、なにしろ論説委員が田母神氏に最優秀賞を与えた審査員の一人だったというから、必死で自社の保身に強弁を張っているというのがミエミエなのがいささか哀れではある。論文の中身がまた「最優秀賞」どころか、日本軍側の資料の表層的な読みのみで「南京事件」を著したことで歴史家としての見識にはいささか疑問符がつきかねない秦郁彦氏にまで「徳川埋蔵金伝説並みの妄想史観」「幼稚」と言われてるんですから、それを大新聞の論説委員が最優秀賞に選んだって? 論説委員にしちゃお勉強が足りないようで…。

国会参考人招致の前の午前中に行われた自民党の防衛部会ではまず座長の仲谷元防衛庁長官(第一次小泉内閣)と、現防衛大臣のハマコーの息子が、事情説明して陳謝したそうだが、ところが出席の委員からは田母神氏を擁護する発言が相次いだとか。ずっと政権与党の政党で、それも防衛部会のメンバーであるからにはこの分野の専門家を自任する国会議員たちが、文民統制の基本すら分かっていなかったのである。つまり彼はあなた方の権威を否定する越権行為をしたってことなんですよ。いったいどうなってるんだ?

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